東京発 ファッション通信

ブルマ絶滅の危機


杜若紗綾絹(かきつばたさやきぬ)

1996年7月18日、某最大手新聞によって日本で起っている衝撃的な事件が明らかにされた。その記事によると、女子生徒の標準体操着として長年使われてきたブルマーが、今や絶滅の危機にあるという。現実的に既に多くの学校でブルマーが廃止されているのである。廃止されるに至るには、ブルマーを着用する生徒がそう望むからだという。その理由として最も強い意見は「恥ずかしいから」である。ブルマーはおしりや太ももが強調されるという側面を持つので、確かにそう感じる生徒はいるだろう。しかし、それならば水着や短いスカートなども同様に恥ずかしいはずだ。ブルマーだけが廃止されるのは不自然である。それにも関わらず、実際に首都圏では小学校で2、3割、中学校で5割、高校では7、8割もの学校がブルマーを廃止しているというデータがある。こうなれば他にもっと決定的な理由がなければこの事実を説明できない。その廃止理由とする背景には多くの矛盾が存在する。この問題について、その新聞記事と関連させて意見を述べていこうと思う。


女子の9割「廃止」(某大手新聞から抜粋1)

「ブルマー廃止は生徒からの要望。決して運動抑圧の意味はありません」埼玉県立越谷南高校の教諭、渡辺雅弘氏は言う。同校は来年4月からのブルマー廃止を決定したばかりだ。きっかけはこの春の生徒総会。たまたま議題に上がったのが女子のブルマー問題だった。廃止を求める理由は (1)「学校の周辺に変質者らしき人物が現れるのでブルマーでは危険」(2)「女子の運動部ではブルマーはむしろ少数派なのに、なぜ体育だけブルマーなのか」など。結果的に女子生徒の9割以上がブルマー廃止に賛成した。

納得のいかない決定

しかし、これらは理由になっていない。まず(1)の理由では「ブルマー目当ての変質者が現れるから」なら納得できるが「変質者が現れるからブルマーでは危険」では何の説得力もない。ブルマーであろうとなかろうと、ちょっと薄手の格好をしていれば全て危険ということなのだ。それなら警備員を一人雇った方がずっと効率的で費用もかからない。(2)の理由にしても、日本の学校では基本的に部活動は何を着ても自由なのに、なぜ体操服を着る体育の授業と比較するのかが分からない。ブルマーは体育の授業のいわば制服であり、登校する際に着用する制服と同じである。一方、部活動は自由選択なのだから別に特別な決まりなどなく、個人の自由で服装を選んで良いわけである。よってこの二つを関連付ける理由など何もない。最後に女子の9割が廃止に賛成となっているが、例えば集計方法が挙手によるものだとすれば、周りの雰囲気などに左右されやすく、仮に9割という数字も解答者の総数により信頼度がかなり違ってくる。実際、そんなこと気にもとめなかったという生徒が多いのではないだろうか。
次にブルマー廃止の決定権を握っている学校側が、実際にどんな状況にあるかを考えてみる。現在日本では子供の数の減少が著しく、生徒をできるだけ確保しなくてはならないので、とにかく生徒が嫌がるのであればその意向に従うのが賢明という考え方が根付いている。ブルマーの小、中、高校別の廃止割合を見ても、この考えは単純に否定できないようである。


機能に影響少ない (某大手新聞から抜粋2)

「たしかに機能性という点では短パンよりブルマーが上。最近はすそをひざ上で 切ったハーフパンツと呼ばれるものやスパッツも人気ですが、真剣にスピードなどを 競うならばやりブルマーでしょう。」東日本営業部スクール担当の池田卓嗣氏の言葉に気を良くしたのもつかの間、池田氏の口から驚くべき発言が飛び出した。「そうは言っても、学校の体育レベルではどちらを使ってもほとんど影響はないんです。ちなみに首都圏では、女子のブルマーを廃止しているのは小学校では2、3割、 中学校では5割、高校では既に7、8割に上っているはず。ブルマー廃止の流れはせせらぎから一級河川になってきたといっていいでしょう」ブルマー廃止の動きが盛んなのは学校ばかりではない。バレーボール国内リーグ(Vリーグ)事務局によれば、 リーグ8チームのうち、現在公式戦でブルマーを採用しているのはわずか2チームだけ。 女子バレーボールの世界でもブルマーはもはや「風前の灯」だ。「回転レシーブなど激しいプレーのたびに、選手が気にしていちいちブルマーを下げるのを見て、監督やコーチからも『みっともない』との声があがっていたのが 廃止のきっかけ。今のスパッツタイプに切り替えてからカッコイイし、強そうに見えると選手の評判も上々です」。これは90年にブルマーを廃止しているダイエー広報部の弁。サッカーのJリーグの影響を受けて「魅せるプレー」を気にするようになったことが皮肉にも、ブルマー衰退に拍車をかけた。

Vリーグと全日本バレーボールの違い

Vリーグ女子バレーチームのブルマー廃止のきっかけとなったのは「選手が激しいプレーのたびにブルマーを気にするのでみっともない」ということだが、ここに大きな矛盾点が存在する。もし、バレーボールの運営陣がそのように考えているのなら、何故真っ先に全日本のユニフォームからブルマーを廃止しないのだろうか。ブルマーの方が良い動きができるというなら、当然勝つためにブルマーは必須のものになるはず。世界戦ではブルマーを必ず着用するという規則はない。Vリーグでブルマーを廃止するというのであれば、全日本のユニフォームからもブルマーを廃止しなければおかしい。一方では廃止しておいて、他方では廃止できるのに廃止しない。これはどう考えても矛盾している。

ハーフパンツは本当に必要なのか?

一口にハーフパンツと言っても、材質やすその長さ、密着度などは多種多様。例えば、すそは長いがスパッツのように密着したもの、男子の短パンとほとんど変わらないもの、すそは短くぴたっとしているものがある。どのタイプも共通して言えることは、ハーフパンツはブルマーより機能は劣る反面、露出度を低く抑えられるということだ。「問題なのはブルマーそのものではなく、その着用が強制されている点だ」という理由であるが、これはそのままハーフパンツにも当てはまる。そもそもブルマーなどの体操着は入学時や進級時などに半強制的に買わされ、体育の授業の際にそれを着用するよう義務づけられている。ブルマーをハーフパンツに代えたところで、この問題は何も解決しないのだ。それならば機能の優れたブルマーの方が良いはずである。

ブルセラ報道におけるマスコミの責任

では何故、こうも簡単に社会全体が廃止の方向に動いてしまったのだろうか。その一つとして考えられるが、かつてのブルセラ報道によって社会全体がブルマーに関して麻痺状態になってしまったということだ。特に最近のワイドショー関連の報道体勢に原因があるのではないかということである。私から見れば、とにかく視聴率を稼ぐために人々が興味を持ちそうなネタにパッと飛びつき、しばらく騒いだ後、また次のネタにパッと移っていく。そのネタを取り上げている間も表面だけはまともな意見で固め、本質がありそうな部分に関してはタブーとして触れたがらない。
確かにTV局として生き残るためには仕方のないことかもしれないが、あのブルセラ報道のおかげで、ブルマーは卑猥なものであるという認識が万人のものになってしまった。世間に与えた影響に関しては責任のある態度をとるべきである。ただ純粋にそのコスチュームに魅力を感じるだけの人にとって、これほど不利益を与えるものはない。このような問題のあるマスコミの報道によって、ブルマーだけが廃止される結果になってしまったのである。

自分自身で考えてみてください

露出度の高い服は他にもいろいろあるのに、何故ブルマーだけがこれほどまでにマスコミに騒がれるようになったのか?それは多くの人に何らかの特別性を感じさせたからだろう。ブルマーが好きという人も、ブルマーを廃止しようと考えた人も、結局のところブルマーに何らか特別なものを感じているからではないだろうか?そうでなければどんなちっぽけな運動も起り得ない。まずは、どの立場の人も自分がブルマーに対して何か特別な感情を抱いているのかどうか、自分自身で確認してみてはどうだろうか。本当によく考えてみれば、ブルマーだけを廃止する正当で納得のいく理由などあるのだろうか、というのが私の本心である。


ユニフォームに詳しい
ファッションデザイナー
北野優一さん   『ブルマ廃止はファッションセンスの問題』

ブルマがどんどん廃止されているらしいですが、これはとても残念なことですね。特に、ちょっと前にブルセラがはやってからブルマは一貫して悪者扱いです。これはいけません。ブルマの良いところを見直すべきです。だいたいオリンピックを思い出してください。多くのブルマの選手がメダルをとっていました。これは機能的に非常に優れている証拠です。もうひとつ重要なのがファッション性です。スポーツウェアデザインは機能性とファッション性の両立がいちばん大切だからです。上手く着こなせば長年使われたブルマの良さに改めて気付くのではないでしょうか。
では私のお薦めのブルマファッションについて述べようと思います。まず色について、私の認めるものは紺、赤、緑、青の4色ですが、体育の授業用のものは紺が基本です。小学校ではまず紺以外にないでしょう。中学、高校では私立系などに特に色分けが見られて、学年色がブルマにまで及ぶこともあります。色が多数あるのは基本的にはファッショナブルなのですが、先程あげた4色以外はあまりお薦めできません。例えばうすいピンク、紫、白、オレンジ、黄、水色などは何故か見るだけで気持ちが沈んでしまいますね。何か違うのです。(デザイナーとして)心に込み上げてくる感動がありません。ブルマの存在をはっきり強調する色でなくてはなりません。両サイドにラインが入っているものもありますが、この場合は先程の濃い色とは対照的に薄い白がベストなのです。これらの対比によってまず視覚的な刺激を与えるのです。
ブルマの材質はポリエステル100%かナイロン100%が普通です。学校用には、どちらかというとポリエステル製の方が多く採用されていますが、私は伸縮性の良いナイロン製の方をお薦めします。これだと少々小さめのサイズでも体にフィットさせることができますので、成長を見込んで大きめのサイズを買う必要がなくなります。大きすぎるブルマは絶対にいけません。あれほどダサくてみっともないものはないですよね。こういったところからブルマの人気が落ちていったのでしょう。それから上着の出し入れについても大きなポイントです。あまり変化をつけられない体操着ファッションですから、ここは特に注目したいところです。上着をブルマの中にしまうタイプは機能的には優れていますが、ファッション的には外に出すタイプのほうが人気があります。個人の主張がよく表れるところですが、残念なことに校則で決まっているところもあるようです。学校側は規制するよりも、ファッションについて生徒に教えていってほしいですね。生徒のファッションセンスが養われればブルマの人気も復活するんじゃないでしょうか。

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